0546  第546話  さいごの約束 「第六章  有機の酒」

 

 一月二十四日、四回目の肝動注が終わった。化学療法の場合は、すぐに効き目が
わかるわけではないので、四回目を終えてから検査することになっていた。
 CTの結果を聞く日が来た。
「しようがないよ。なるようにしかならないさ」と平静を装う夫のジャケットの後
ろを少しつかんで、引っ張られるようにして若林先生の部屋に入った。いつものよ
うにカルテとCTを見ながら、先生は口を開いた。
「よかったですね。かなり縮小していますよ」
 肝動注を開始する前の写真と、今回のCTを並べて比較しながら説明してくれる。
「四回の治療でこれだけよくなっているので、しばらく続ければ、もっと効果があ
ると思います」
 体調や副作用の具合を見ながら、一週間に一度、この治療を続けることになった。
 診察室から出たあと、小躍りしながら病院の玄関まで走ったような記憶がある。

 親戚、きょうだい、友人、病院友だち、たくさんの知り合いに携帯で \(^o^)/
バンザイメールを送った。みんなから、いっせいに「よかった、安心しました」と
いう返信が届く。 朝からずっと結果を心配しながら待っていてくれたのだった。
ありがとう。

 (坂本敬子著 「さいごの約束」 文藝春秋刊より)