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0520 第520話 さいごの約束 「第ニ章 闘病が始まった」

外科の先生からは、そう言われていたのだった。
三月二十八日に入院し、翌々日の土曜日には外泊した。基本的に土、日は病院に
いても検査も治療もないので、半年の命といわれたからには少しでも子どもたちと
の時間をつくりたいと思い、できるだけ家で過ごす時間をふやしたかった。
四月一日、再び病院に戻る。陳先生から余命について聞かされてはいたが、もう
少し詳しいことが聞きたくて、最初に診てもらった食道手術の権威である外科の先
生の外来が終わるのを待った。夜八時をまわったころ、やっと先生に会うことがで
きた。夫のカルテを見る、厳しい表情の先生に、
「この抗がん剤治療が効かなかったら、一体どうなってしまうんでしょう?」
と訊いた。
「なすすべはありません」
それが先生の答えだった。
あまりのショックに何も考えられず、「わがままな面談を申し込んですみません
でした」
と言って、その場を辞した。
なすすべはない。でも、そんなわけにはいかない。
そこから、私の闘いは始まった。
(坂本敬子著 「さいごの約束」 文藝春秋刊より)
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