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0519 第519話 さいごの約束 「第ニ章 闘病が始まった」

夫の病気がわかってから、私がまず頼りにしたのは、上の姉だった。薬剤師の資格
を持っていたので、「お姉ちゃん、どうしよう?」と相談すると、すぐにインターネ
ットで調べてくれて、そのプリントアウトを送ってくれた。 その姉のすすめで私も
パソコンを買い、自分で調べられるように、一所懸命教わった。
「食道がん」で検索するとたくさんの情報が出てくる。つい闘病記を読んでしまうの
だが、サイトに亡くなったというメッセージのあることも多く、もう見たくないとい
う気分になる。本も同じだった。参考になるかもしれないと、がんの闘病記を買って
も、亡くなってしまうという結果なら、読んでもむなしいと思ってしまう。
しかし、インターネットの国立がんセンターのサイトで「食道がん」を調べたら、
どんな医学書よりも最新の知識がわかりやすく書かれており、どんな病気なのかとい
うことがよくわかった。
本で参考になったのは、義兄がすすめてくれた帯津三敬病院の帯津良一先生の著書
『気功的な人間になりませんか――ガン専門医が見た理想的なライフスタイル』だっ
た。帯津先生は東大医学部を出て、がん専門の外科医として二十年近く勤めたあとに、
ご自身の病院を開業し、漢方や気功、鍼灸、食事療法などを取り入れた独自のがん治
療をなさっている。がん治療といえば、まず手術・抗がん剤・放射線の三大治療法が
あるが、それ以外の代替療法といわれる分野の可能性を帯津先生は研究していらっし
ゃるのだ。西洋医学出身の医師としては珍しいことらしい。
夫の病気を知った人たちからは、がんに効くというものがたくさん送られてきてい
た。それはありがたくて、飲めば治るなら何でも飲ませたくて、私は必死にすすめた。
夫は「お腹ががぶがぶしちゃって、もう飲めないよ」とか「苦くて飲めない」など
と文句ばかり言っていたけれど。
もうひとつ、夫の病気がわかった直後にNHKで放映していたがん治療の最前線を
取材した番組も、がんについて手探りの状態で学んでいた私にとって、非常に参考に
なった。免疫療法で有名な瀬田クリニックや、抗がん剤の使用法を研究している平岩
正樹先生などが取り上げられており、ビデオに録って、繰り返し見た。こんな治療法
もある。たとえ「なすすべはありません」と言われても、そんなわけはないと「夢」
を抱いたのだった。
(坂本敬子著 「さいごの約束」 文藝春秋刊より)
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