![]()
0498 第498話 酒蔵の町・新川ものがたり 「酒量増加」
飲酒量増加の因果な商売
酒問屋の仕事は酒嫌いではつとまらない。丁稚小僧から売手役、支配人と
酒商売一筋に生きた藤七にとって酒は切り離すことのできない因果関係にあ
った。
隠居役となったのちも、醸造元との交際、品評会の審査員と、いずれも酒
の上での仕事であり、用件が終わったあとの宴会は長時間にも及ぶ。このこ
とについて藤夫は、「仕事とはいいながら因果な商売ですわ」と沢に語った
ことがある。
藤七の度を越した飲酒については、家族全員の憂慮するところであった。
これは次の「雄次郎日記」および親子兄弟の往復書簡等によって、その状
況をうかがうことができるのである。
●大正三年一月一日 木 快晴
夕六時品川下車、直ちに高輪宅ニ入る、父上稍々(やや)大酒、雑談翌
朝四時ニ及ぶ
●大正三年一月二日 金 晴
十一時ニ近き頃帰宅、父上と大酒問題にて少々弁論ス
●大正三年一月四日 日 晴
新川初売場にて父上ハ早くより出勤、新堀にて大いに飲むと云ふ
●大正三年十一月二十日 金 晴
父上相変わらず御大酒の由、兄上より来状
この間、藤七は今津の雄次郎にあてた大正3年10月30付返書の中で、
酒量増加に対する反省と、家族全員の憂慮に対する感謝の気持ちを文章にし
たためている。つまり、文面には「其元(そこもと)より両兄へ宜布(よろ
しく)御伝声可被下候(くださるべくそうろう)」とあって、子供たちの意
見に対し、面と向ってはいえないものの、その思いやりに感謝する気持ちが
端的に表現されているのである。 (中略)
(酒蔵の町・新川ものがたり 大関と木藤七、木藤夫、木文雄、
沢和哉共編 清文社刊より
![]()