0490  第490話  酒蔵の町・新川ものがたり 「旅の記録5」
  国内の旅

 また湯崗子(とうこうし)の東北20キロの千山登山では、馬、牛、ろば
の三頭で牽く現地独特の馬車を利用した。なお、9月2日付「遼東新聞」に
は、前日4人の旅順戦跡見学の模様が報道されたという。
 この旅行中藤七は、俳諧仲間や世界一周旅行同行で知己となった友人とも
逢い、久しぶりの対面に酒をくみかわして語らい、旧交を暖めた。
 また親子で謡を謡い、興にのっては句作して「雁皮の手帳」に記した。

 宮島岩惣旅館にて
  まつ涼し旅も二日に雨晴る

 耶馬渓山田屋旅館にて
  権現のおためし雨か夏の旅

 人吉鍋屋にて
  草臥やまとろめど蚊に襲ハるる

 阿蘇神社にて
  初秋や阿蘇の煙りのなひきやう

 武雄三国屋旅館にて
  温泉上りに山嵐呼んで西瓜かな

 遼陽城内にて
  靴音に豚の眼覚す暑さ哉
(かな)

 龍泉寺泊り
  温突
(オンドル)のぬくミ 残りや虫の声

 旅順戦跡見学
  草の露 鳴呼兵
(ああつわもの)の泪哉(なみだかな)

(酒蔵の町・新川ものがたり 大関と木藤七、木藤夫、木文雄、
 沢和哉共編 清文社刊より)