0482  第482話  酒蔵の町・新川ものがたり 「自選句集3」
  俳人・應々居詩葉

 ● 藤七の「自選句集」つづき

 五月三十日四十四にて金縁妙浦川逝去
  みしかきやちぎりはかなき草まくら

  瀧霧に華厳は眠し夏紅葉
  愛想に蚊ももてなすか安泊り
  秋立やうたた寝起こし啼く雀
  幼子や見やう見真似の角力取

  立秋のはづみもちけり水車
  行秋や眼にみゆるもの見へぬもの
  露の香や何気なく踏道すから

 原島愛東大人ノ旧里なすに
  恩人の出ました里や菊の花

  あき立や白髪こぼるる膝の上
  うかうかと立ちし月日や枯尾花

 信州善光寺に詣(まいり)けるとき
  霜もよき光り引けり朝詣
  空澄ミてますます枯るる芒(すすき)かな

  降る雪のますます軽し暮うつり
  かねてより埋れ家なから落葉かな

 名倉
  旅多きことしを宿の時雨かな

 甲州にて
  蚕過し小春や嫁の村廻り
  ちとありし雪灯らしき軒端哉

(酒蔵の町・新川ものがたり 大関と木藤七、木藤夫、木文雄、
 沢和哉共編 清文社刊より)