0481  第481話  酒蔵の町・新川ものがたり 「自選句集2」
  俳人・應々居詩葉

 ● 藤七の「自選句集」つづき

 四十四年四月五日日本橋開通式にて
  朝日先ヅ渡り初けり橋の花

 四十五年四月ニ日服部理石仏出棺見送ル
  けふバかり日の影うとし木蓮花
 又二七日
  友減りて夕暮寒きさくらかな

  舟呼ぶハ川向ふ也春の風
  後れはせに蔵出候花むしろ

 四十五年五月五日田喜庵小山人氏ノ娘孫竹安初節句席上
  めくる日に添うてすすむや幟鯉

 大正二年十一月二十三日信州小諸 大塚商店祝賀ニ敬一同行ス
  大霜や姥がなさけのかし羽織

  酒ひとつ茶一つ年ハ暮にけり

 大正四年十二月四日飯野玄雅老止宿 出先より帰宅せしとき
  樫の実や幼なこころの土産もの

 大正五年一月十五日横地慶助君 米寿君病死七十八才
  春なから嘸(さぞ)寒からうひとり旅

  しんみりと外に声なし春の雨
  蝸牛(かたつむり)に見つけられたり肘枕
  さてすずしそふ云ハるれハ己(おの)か家

 日光より足尾山越し
  呼水や峠の茶屋の杜若(かきつばた)

(酒蔵の町・新川ものがたり 大関と木藤七、木藤夫、木文雄、
 沢和哉共編 清文社刊より)