0462  第462話  酒蔵の町・新川ものがたり 「初売式」
  各酒問屋の取り扱い酒名と行事

 当日、酒店(さかだな)では来客に茶を出さず、桜湯を出した。
 来客は祝儀として5駄・10駄の取り引きをしてくれる。中井酒店
の明治36年初売式の取り引きは730駄余、翌37年750駄余、
(忠吉日記)であった。

 取り引きの成立した客は別席に招待され、「醸造雑誌」の記録にも
あるように、まず三ツ組の盃に酒がつがれ、祝盃をあげる。さらに席
についた来客の前で、次々と「新川〆(じめ)」で景気を添え、客は
その手の打ち終わらぬうちに呑みほすのである。これを座席についた
来客へ順次に行い、最後に売人役が乾杯して預かる。あとは、ぬたと
刺身で盃の献酬ということになり、来客は十二分の歓をつくして新客
と入れ変わる。
 「新川〆」というのは「エーイ、ヨイヨイヨイ・・・」と威勢よく
七五三の手拍子をうつ手締めで、新川独特のものであった。

 また、その年の新酒到着にあたっては、初売式と同じく新酒荷開式
が古くから行われていた。明治25年4月25日発行の「醸造雑誌」
(第84号)には、「預(かね)て記載の如く去る15日は、東京新
川問屋は新酒の荷開式を挙ぐ。其景況は、各問屋の店頭には積樽し、
又毛氈を敷き金屏風を立廻し、三組の盃台を飾りたるは皆古例の式に
據(よ)る処なり」と、模様が紹介されている。
 さらに新川の各酒店では、「印披露(しるしびろう)という行事が
行われていた。
 各産地の酒造家が、苦心して醸造した新商標の酒を、一流の銘醸酒
の中に割り込ますため東京市場に積み出し、宣伝するための行事であ
る。(中略)

(酒蔵の町・新川ものがたり 大関と木藤七、木藤夫、木文雄、
 沢和哉共編 清文社刊より)