0448  第448話  酒蔵の町・新川ものがたり 「母の死」
  関口家に寄寓

 いずれにしても、なみが中井御本家の奥女中となり、玉吉(藤七)が祖母
に養育される生活も長くは続かなかった。文久元年の奥づとめから4年7か
月、玉吉が6歳の慶応元年(1865)7月24日、なみが43歳の若さで
死去したのだった。

 酒店支配人、本家奥女中と、ともに中井家に深いかかわり合いのあった藤
右衛門、なみ、両人の源隆寺における葬儀(資料集第六−ニ〜五参照)に対
しては、中井家から丁重にもて成されたようである。(中略)

 藤七は母の死とともに慶応元年12月限り、中井家からのお手当てを打ち
切られ、翌2年わずか7歳で先祖代々ゆかりの深い中井酒店に丁稚(でっち)
小僧として奉公する身となった。

 藤七の四男・木寿一(慶応義塾大学教授)が、昭和44年出版した「酒
蔵の町」のなかで、父について「全く気の毒な人生の出発であった」と回想
しているように、6歳で両親と死別し、7歳で丁稚小僧に入らねばならなか
った藤七の人生は、まことに不運であったという以外に言葉がなかったので
ある。

(酒蔵の町・新川ものがたり 大関と木藤七、木藤夫、木文雄、
 沢和哉共編 清文社刊より)