0435  第435話  酒蔵の町・新川ものがたり 「勘定所御用達」
  脇両替店の開業

 中井両替屋は、肥後細川家、若州小浜の酒井家、越前福井の松平家、筑後
久留米の有馬家等、親藩、いわゆる徳川家の近親が封ぜられた藩を含み、主
として西国、北陸大名の江戸藩邸の出入り商人として「御掛屋両替御用」を
つとめた。
 明和8年(1771)3月には新川(当初は霊巌島銀町)において、下り
酒問屋を兼営。さらに天明8年(1788)には、江戸の資本力のある商人
のなかから選抜された「勘定所御用達」10名の一員として登用され、幕府
の経済政策遂行の一翼をにない、とくに寛政改革の重要な施策の一つとして
設立された「猿屋町会所・七分積金町会所」の運営にも参加した。
 寛政期(1789〜1801)に、取り引きのあった大名屋敷の数は、一橋、田
安家の2卿を含み13家に及び、寛政8年には郡代附御貸附方(馬喰町御貸
附)掛屋御用を、単独で拝命するなど、幕府代官の両替業務にも積極的に進
出したのだった。

 いずれにしても、中井両替店開店当時の正徳・享保期(1711〜36)
といえば、江戸時代を通じて万延、文久時代を除き、正徳新金、乾字金、四
宝銀等の新発行で、金銀銭の相場がにわかに大変動した時機であった。
 播磨屋の開店と発展は、この商機に乗じたもので、さらに近江商人独特の
堅実な営業努力によって、着々とその地位を築き、信用を高めていったとみ
ることができるであろう。

(酒蔵の町・新川ものがたり 大関と木藤七、木藤夫、木文雄、
 沢和哉共編 清文社刊より)