0410  第410話  酒蔵の町・新川ものがたり 「明治維新と酒 」
  明治から大正時代にいたる酒造り

 文化文政期(1804〜30)に異常なまでの発展をみせた灘酒造業は、
幕末から明治維新にいたる政争のなかで、時代の大きな波に巻きこまれ、
大きな打撃を受けねばならなかった。

 つまり、従来幕藩体制のもとで、営業特権を保証されてきた江戸積酒造株
体制が明治維新とともに動揺しはじめたのである。

 当初、明治新政府は、江戸時代に酒造業者が莫大な出血によって獲得して
きた酒造株を保証してゆく目的で、「酒造鑑札書替料」として株高百石につ
き金20両を徴収した。これは当時、灘五郷で株高五十万石余として十万両
以上の巨額の出費であった。にもかかわらず各酒造家が、この書替料の徴収
に応じたのは江戸時代からの酒造鑑札を、あらためて新政府によって保証さ
れることを期待してのことであった。

 しかし、その期待は裏切られ、「永世の家督」であるべき旧酒造鑑札は
明治4年に没収され、新たに一定の免許料金と、酒造稼ぎ人一人につき毎年
5円を納めれば、造石高にかかわらず誰でも酒造業を開始することが可能と
なった。
 この制度を契機として地主酒造家の誕生が全国にみられ、翌5年には全国
の造り酒屋が3万軒近くにまで急増。地酒としてそれぞれの地方市場を販路
に各営業を開始したのだった。

(酒蔵の町・新川ものがたり 大関と木藤七、木藤夫、木文雄、
 沢和哉共編 清文社刊より)