0407  第407話  酒蔵の町・新川ものがたり 「灘酒の醇美」
  平安から江戸時代にいたる酒造り

 このように、19世紀において灘酒造業が、江戸市場を独占するほどの画期
的な発展をした要因には、まず伊丹諸白から寒造りに集中していった酒造技術
の発展があげられる。
 明治40年刊〔灘酒沿革史」(神戸税務監督局編)は、灘酒の酒質の醇美な点を
指摘し、その要因として、第一に宮水の水、第二に攝播の米、第三に吉野杉の
香り、第四に丹波杜氏の技倆、第五に六甲の寒気、第六に攝海(せっかい)の
湿気をあげている。

 なかでも酒造りの醗酵過程において不可欠のリン(他の酒造用水と比較して
約10%多い)とカリを多く含んだ宮水は、鉄分が極めて少なく、塩分を適当
に含んだ西宮の一角から湧き出る硬水で、天保11年(1840)「桜正宗」
の祖先・六代目山邑太左衛門によって発見された。
 これが水船によって灘にも運ばれ、「宮水」の名で広く普及したのだった。
 明治30年12月発行の「醸造雑誌」(第262号)によれば、当時「宮水」
は、酒造用水として堺、九州方面にまで輸出され、明治20年代におけるその
輸出量は、年間数百万石(一石は180リットル)にものぼったという。

(酒蔵の町・新川ものがたり 大関と木藤七、木藤夫、木文雄、
 沢和哉共編 清文社刊より)