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私のガン
S字結腸ガンと医者に宣告されたとき、私はすっかり観念したが妻は違った。切り
取られた14センチほどの肉片を見て、ピンクに輝いてる、こんなのガンじゃない、
誤診よ、といった。
しかし、私は1年前から、鈍痛と下痢、そして血便を繰り返している。
その為、決して誤診ではないと信じた。
実は別に有力な証拠があった。それは昔、仏壇に飾られた少女の写真を眺めている
うちに、彼女にとりついた死神が、私に乗り移った恐怖だった。それが現在も続き、
夢の中で地獄の池の傍らで、血を吐く姿に怯えていたのだ。
事実、結婚前に、死神から第一弾が実行されていた。
朝、突然大量の出血があり、肺結核と診断され、入院治療したのだ。妻はそれを知
らない。S字結腸ガンは第2弾であった。
医者はこれで、腸の中の通りがよくなったよ、とアッハッハと笑いかけた。
もう大丈夫ということだった。
しかし 、私は死神の第2弾により,あと5年位の命と予想して予定の行動をとるこ
とにした。まず社長業を依願退職した。
出勤しても、体力がないので居眠りしていては、社長失格です。
さて治療はどうすればよいのか。
病院からは、手術後、内服薬をくれるが、馬の餌のような量で体力が低下して、目
がかすむ、階段は上れない状態が続いた。
そこで、知人の野本さんに相談する。(野本さんは、週刊誌でおなじみの卵油の発
売者で、今は故人であるが、私は40年前からのお付き合いだ)
私の治療法は彼の勧めで卵油を服用し、日本酒で治す事となる。
日本酒には確信があった。それは、結核のとき、病院を抜け出しては、わが人生の
最後だとばかり、池袋で飲みまくった例がある。
それが効いたのだ。予想外の速さで、退院出来たのである。でも、私は卵油と日本
酒だけでは、今回、治せないと思った。
再度の死神の挑戦は重い打撃で、これには、別途に有効なる反撃が必要と考えた。
私は病院で或る温泉の噂を聞いていた。その為に、秋田の八幡平に行くことにした。
(つぎに続く)
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